学年が進むにつれて勉強が楽しくなる、後伸び力の育て方(第16回)
自学力の育て方⑦ 「合格」とはどういうことでしょうか?
『名門公立高校受験道場流 自学力の育て方 受験突破だけで終わらないために』
という本を執筆し、KADOKAWAから発売中です。
全国のトップ校受験専門塾が集まる、
名門公立受験道場の精鋭陣が執筆し、
私は30数ページほど書いております。
進級進学のシーズンに、まん延防止措置解除の機会に、
『自学力』、いかがでしょうか?
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自学力が身に付きつつある生徒のイメージはどんなものですか?
『自学力の育て方』では、それぞれの塾長が、
それぞれに、生徒や世の中に対して感じている課題に応じて、
それぞれの自学力をイメージして書いています。
シリーズでは、私がイメージしている自学力が付きかけている、
生徒のイメージをお伝えしています。
前回までは、点数アップ・合格を目標にする勉強と、
知的好奇心を伸ばす勉強は、あくまでも車の両輪であって、
どちらかだけを回すと、どちらも弊害があるという話でした。
今回は、そもそも勉強をすることで登ろうとしている山は何か?という話です。
勉強することの意味を述べた本は、それこそ山ほどあります。
論理的思考力を身に付けるためとか、
教養を得るためとか、
人生を豊かにするためとか、
どれも正解だと思いますが、
塾に携わっていると、
「合格しなければ、意味がないでしょう」という、
切実な保護者のニーズとの間で板挟みを、
一度は経験します。
勉強には受験を超えた価値がある、
勉強は受験に合格してこそ価値がある、
この一見正反対の立場は、
「知的好奇心を伸ばす勉強」と「点数アップ・合格を目指す勉強」と、
どちらが大事か?と似たような対立です。
ところで、受験に合格するのは、何のためですか?
将来の選択肢を増やすため?
いい職業や将来の目標にとって有利にするため?
よりよい教育環境を得たいから?
それらは合格の、魅力的な副産物であって、
合格そのものの価値ではありません。
合格という漢字をみるとわかりやすいのですが、
「格に合う」と書きます。
その学校の、品格・風格に合うとみなされた生徒が、
その学校の品格・風格を身に付ける、資格を得られるわけです。
単に、ある一定の得点を超えれば合格に見えますが、
得点力を身に付けるためには、
弱点を自分で分析したり、自分で作戦を立てたりといった、
自学力を磨く必要があります。
その過程で、きちんと自力で取り組んだり、
周囲の適切なサポートがあったりすると、
知的好奇心も得られる機会になります。
得点力(自学力)+知的好奇心
これらは車の両輪であって、決して矛盾しない
とずっと言ってきたのは、そういうことでもあります。
ただ、これらを「品格」と呼ぶにはちょっと大袈裟なような気がします。
受験勉強は、おそらく人生で初めて、
自分の道を自分で決める機会。
自分で道を決めるということは、自然に、
「自分が何によって支えられているか」に気付く機会でもあると思います。
例えば、
同学年で、家庭や個人(例えば健康面など)の事情で、
行きたい高校を受験することすら叶わない子がいるかもしれません。
せっかく受験したいところを目指していいと言われていても、
本気になることができずに諦めていく子たちをみるかもしれません。
行きたい高校を受験できても、真正面から向き合えず、
いい高校に行っても不完全燃焼感を持ったまま進学する子もいるかもしれません。
それだけでなく、
昔は、女性だから、長男じゃないから、家柄が違うから、
などといった、本人の資質以外の理由で、
勉強が好きでも進学できない子なんてたくさんいたことを知ることもあるでしょうし、
たまたま興味を持って調べた現代世界や歴史上の人物が、
現代日本ではしなくてもいい苦労を重ねたところを知るかもしれません。
私たちがやりたいことに着手できるという、ただそれだけのことも、
実は、自分の能力や意思だけでなく、
周囲の環境や、時代の巡りあわせ、偶然の積み重ねによって、
初めて可能になることを、
頭だけでなく、心と体で実感すると思います。
そういった自分の能力や意思以外のところも含めて、
「あなたの才能」と、呼ぶのです。
一見マイナスの環境は、ハンデでもあり、バネにするチャンスでもあり、
一見プラスの環境は、有利でもあり、油断と慢心をもたらすものでもあり、
プラスかマイナスか、それ自体に意味はありません。
人間の性格のあるひとつが、長所にも短所にもなるのと同じで、
長所だから才能と呼ぶわけではないのと同じです。
初めて自分で自分の道を進もうとしたときに、
自分が何によって支えられているか、ということを知る。
それを「品格」と呼ぶわけです。
特に新しいことを言っているわけではありません。
私は悪ガキだった頃、祖父によく、
「お前は才能があっても、勉強する資格は無い」
なんて叱られていました。
過熱した受験から一歩引いて、
受験本来に意味に立ち返れば、自然に力はついていくのです。
《過去の記事はこちら》
➡第1回 「概念がある程度入ってからがお勉強です」
➡第2回 「思考力を育てるには?」
➡第3回 「情報処理能力と読解力」
➡第4回 「読解力は大きくなれば身に付くわけではない」
➡第5回 「頭が悪いのではなく、具体が入っていないだけ」
➡第6回 「受験勉強が悪いのではなく、勉強のイメージが偏っているだけ」
➡第7回 「受験勉強の意味を考えてみる①」
➡第8回 「受験勉強の意味を考えてみる②」
➡第9回 「受験勉強の意味を考えてみる③」
➡第10回 「自学力の育て方① まずは歯を磨くように勉強する」
➡第11回 「自学力の育て方② 先取りは目的が大事」
➡第12回 「自学力の育て方③ 自学力が備わってきた子のイメージ
➡第13回 「自学力の育て方④ 禍福は糾える縄の如し」
➡第14回 「自学力の育て方⑤ 望み高く胸にあるも、その成敗を問わず」
➡第15回 「自学力の育て方⑥ 山をどちらから登ればいいか問題に間違われる問題」
●書籍名:「名門公立高校受験道場流 自学力の育て方 受験突破だけで終わらないために」(KADOKAWA) ●著:名門公立高校受験道場 ●発売日:2021年11月19日 ●定価:1,540円(税込) ●書籍の詳細・購入はこちら
※掲載されている情報は、2022年6月以前に取材した内容です。時間の経過により実際と異なる場合があります。
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