学年が進むにつれて勉強が楽しくなる、後伸び力の育て方(第8回)
受験勉強の意味を考えてみる②
受験勉強というと、必要悪のように述べられることが多いのですが、
正しくとらえれば、決して悪いものではなく、
知的能力の伸長についても、いいことだらけなのですが、
点取りゲームとして扱ってしまうからおかしなことになるのです。
そこで入試にどのような意義があるかを、シリーズで話してみたいと思います。
前回は該当範囲を満遍なく出題することで、
教養バランスを調整する機能があります、という話でした。
弊塾では「知的好奇心の余熱で点数・合格を勝ち取る」という理想を掲げていますが、
知的好奇心の入り口は、
本来でしたら、その教科の面白さがなることが多いですが、
受験をきっかけに学問の面白さに気付く生徒の中には、
入試問題の奥深さにハマったという生徒もいます。
特に大学入試ですね。
高校入試でも石川県は、特に社会に関しては、
公立高校入試のわりには良い問題・深い意図をもった問題があって、
評価が高いです。
入試問題は、入学してくる生徒の学力を測る目標もありますが、
現代のこういう問題点に気付いてほしい、
こういうものの見方ができることに気付いてほしい
といった意図が盛り込まれている場合があります。
例えば20年ほど前、金大附属高校の入試問題に、
次の中から独占禁止法違反のものを選べ
1:キティちゃんはサンリオという会社の許可が無くては使用することができない
2:人気のゲームソフトに、売れない中古ゲームソフトを合わせて、プラス1000円で販売した
3:金沢市内のバスは、北陸鉄道一社しか運営していない
(本当は選択肢が5つありましたが残り二つは割愛)
という問題がありました。
独占禁止法という法律がどのようなことを規定したものか、
という知識を問う問題だけでなく、
身近で具体的な事例と法律の関係を気付かせる、
そして傾向と対策みたいな問題集ではまず見かけない、
難易度がそんなに高くない割に、良問で、
とても好きな問題のひとつです。
入試問題や学校のテストは、
膨大な試験範囲の中から、それぞれの科目の専門家からみて、
「この分野のこういう考え方を身に付けて、次の教育課程に来て欲しい」
ポイントから出題するのが本来の意義です。
これは中学入試や大学入試になると、より顕著です。
学問的には未熟な学生が面白いとフォーカスをあてる分野や単元・ものの見方と、
科目の専門家から観て、
現在や近い将来大切になる分野や単元・ものの見方は、
異なってしかるべきです。
我流で勉強しているときに、専門家から大事なポイントの調整が入ることで、
自分の勉強を更新していくことができます。
これを「重要ポイント提示機能」と名付けましょう。
しかしながら、受験を点取りゲームとしている勉強法ですと、
意図が理解できない問題は「先生の趣味で作った問題」と切り捨て、
難易度が高い問題は「捨て問題」として無理に解かなくていいとされ、
テストや問題集の問題は「知識のアウトプット」としての意味合いしか用いません。
前回は「教養バランス調整機能」、
今回は「重要ポイント提示機能」、
テストや入試問題を正しく捉え直すだけでも、知的な成長のカギは、
実はもうたくさん用意されているのです。
➡第1回 「概念がある程度入ってからがお勉強です」はこちら
➡第2回 「思考力を育てるには?」はこちら
➡第3回 「情報処理能力と読解力」はこちら
➡第4回 「読解力は大きくなれば身に付くわけではない」はこちら
➡第5回 「頭が悪いのではなく、具体が入っていないだけ」はこちら
➡第6回 「受験勉強が悪いのではなく、勉強のイメージが偏っているだけ」はこちら
➡第7回 「受験勉強の意味を考えてみる①」はこちら
塾内文庫は貸出も可。出版社や学者も唸るような良書で、しかも面白い本を厳選してある。
※掲載されている情報は、2021年8月以前に取材した内容です。時間の経過により実際と異なる場合があります。
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