学年が進むにつれて勉強が楽しくなる、後伸び力の育て方(第6回)
受験勉強が悪いのではなく、勉強のイメージが偏っているだけ
前回は、テストや対策が悪いのではなく、
具体が入っていない状態で抽象的な勉強を扱うから、
手段であるはずの
暗記や競争・目標からの逆算思考、
それ自体が目的になってしまう、というお話しをしました。
今回は、子どもが小さい頃に、周囲の大人が持っている
偏った勉強のイメージのせいで、子どもをミスリードしてしまうかも、
というお話しです。
先日、東北大学の入試講評(数学)、「志願者へのメッセージ」で、
とても端的で、数学と受験生への愛に溢れたメッセージをみました。
『数学の教科書や参考書では、基本事項の説明に続き、
問題の解き方が例示され、
さらに自分で問題を解くという構成になっています。
これは有用性と学びやすさを前面に出したものですが、
他方では「公式を適用する」とか
「解き方を学ぶ」ということに重点を置く態度を助長します。
すると必ずしも数学の理解を深めることにならないかも知れません。
より根本的な理解をし、数学を自分のものとするためには、
この概念や公式はなぜ必要か、
この問題がなぜ解けるのか、
または解けないのか、
より一般的な考えや別の視点で説明できるか、
といった視野の広い柔軟な考察が大事です』
引用元 http://www.tnc.tohoku.ac.jp/images/ito/R3/2021mathematics.pdf p.21
この中で「概念や公式はなぜ必要か」の部分は、
今まで私が度々強調していたところでもあります。
私たちの持っている勉強のイメージは、問題を解きまくる、
それをしっかりと直す、
それを繰り返す。
というところに留まっていませんか?
演習重視の勉強が悪いのではありません。
こういう勉強も大事なひとつなのですが、
理解重視の勉強という勉強の両輪のうち、
片方しか全力で回していないという状態です。
厄介なのは、演習重視の勉強に徹して、
理解重視の勉強を捨てた方が、
短期間でテストの点数が上がる場合も多いのです。
もちろん進学校に入学したり、
名門大学に行ったりしてから通用しなくなるわけですが、
実際、東北大学はそのような学生を求めていませんし、
もし不合格だったなら、反省して勉強のやり方を見直すきっかけになるかもしれません。
しかし、定員の関係で、力が不十分なのに合格してしまったら、
自分の勉強の誤りに気付くことができず、一層可哀想です。
理解重視の勉強は、実は幼児低学年期に癖にしておかないと、
後々大変になります。
学校の宿題等をやったあとに、
答えが合っているかどうかだけでなく、
「どうやって考えたの?」と質問を、保護者が投げかけてあげるのが、
まず基本です。
応用編としては、考え方の基礎になる概念を、さらっと遊びの中に入れて教える、
レディネスがありますが、
そちらは教育や学習指導のプロだったり、
保護者自身がきちんと理解重視の勉強にも取り組んできた方だったり、
そういう方がする必要があります。
理解重視の勉強は、時間がかかるものです。
最初に手っ取り早く、頭を使わない方法を覚えてしまうと、
後々頭を使う、時間がかかるものを取り組もうと思う人は少ないです。
小さい頃ほど「アナログで面倒なものを」、
それらがしっかりできるようになったら「便利なものを」、
という順番が基本です。
➡第1回 「概念がある程度入ってからがお勉強です」はこちら
➡第2回 「思考力を育てるには?」はこちら
➡第3回 「情報処理能力と読解力」はこちら
➡第4回 「読解力は大きくなれば身に付くわけではない」はこちら
➡第5回 「頭が悪いのではなく、具体が入っていないだけ」はこちら
幼児・低学年コースの授業で使う教具。このコース出身の中学生の平均偏差値は66。センスをじっくり育てる。
※掲載されている情報は、2021年6月以前に取材した内容です。時間の経過により実際と異なる場合があります。
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