学年が進むにつれて勉強が楽しくなる、後伸び力の育て方(第9回)
受験勉強の意味を考えてみる③
受験勉強というと、必要悪のように述べられることが多いのですが、
正しくとらえれば、決して悪いものではなく、
知的能力の伸長についても、いいことだらけなのです。
前々回は「教養バランス調整機能」という点を、
前回は「重要ポイント提示機能」という点についてお話ししました。
今回は、「点取りゲーム機能」です。
私のように「勉強は点数だけじゃない」みたいな話をするタイプの人間は、
点数を取ることを否定する論調を採ってしまうことが多いのですが、
点数を取ること自体にも、
知的能力を伸長する上で、大切な効果もあります。
入試の「点取りゲーム機能」とは、シンプルに、
「1を聞いて10を知る」能力ではなく、
「10を聞いて7~8を身に付ける」能力で、
これまた知性には必要な能力です。
当然、その過程で、
ある程度の期間、試行錯誤して勉強することで、
計画性や忍耐力を。
理解できるところはきっちり点数にしたり、反復したりすることで、
確実性・正確性・スピードを。
質問を熟読して、適切な内容を答えるようになることで、
他者と目線を合わせることを。
ある程度傾向をみて、自分なりに最短距離を探ってみることで、
情報収集・分析能力や戦略的思考を。
そして何より、
点数という「他人からの評価」をきっかけに
自分の勉強のやり方がどの程度かを知って、
自信と反省につなげないと、何を足掛かりにしていいか、
わからなくなります。
テストのように点数や偏差値で数値化可能なものを用いながら、
知性のような数値化不可能な能力を身に付けていくのですが、
それを高スコアゲーム、競争可能なゲームとして楽しめる要素があるというのが、
入試やテストの本来の意味です。
しかしながら、点数を取ること自体が目的になってしまうと、
途端にこれが歪みます。
傾向と対策があまりにも幅を利かせていて、
それが「勉強」だと思い込んでいる生徒・保護者も少なくありません。
傾向と対策は、王道の勉強を補完する作戦の一部であったり、
一時期勉強から離れてしまった人が一発逆転を狙う奇策だったりしたのが、
現代では一般的になりすぎたと言えるでしょう。
全国学力調査での都道府県順位は、
傾向と対策を学校でたくさんやった順になりやすいですし、
進学校は大学進学実績を出すため、
受験予備校のようにひたすら成績を追っかけるところもあります。
最近は公立中学校でも、高校入試直前に過去問演習をやるところもあります。
教育における問題は、手段と目的の混同に尽きるのかもしれません。
重ねて言いますが、
点取りゲーム機能や傾向と対策が悪いわけではありません。
知的好奇心や教養を磨く勉強と、
点数を追いかけることで身に付く力は、
知性の両輪みたいなもので、
どちらか片方だけを回していても、いけないものです。
頭が良い人というのは、誰も思いつかないような勉強や、
人並み外れた独創的な考え方や、
凡人にはマネができないような努力で成り立っているように、
つい考えてしまうものですが、
先人たちが積み重ねてきた制度を、まずは正しく受け取るだけでも、
相当な力が付くものです。
自ら巨人になろうと背伸びする(子どもにさせる)前に、
巨人の肩の上に乗ってみましょう。
《過去の記事はこちら》
➡第1回 「概念がある程度入ってからがお勉強です」
➡第2回 「思考力を育てるには?」
➡第3回 「情報処理能力と読解力」
➡第4回 「読解力は大きくなれば身に付くわけではない」
➡第5回 「頭が悪いのではなく、具体が入っていないだけ」
➡第6回 「受験勉強が悪いのではなく、勉強のイメージが偏っているだけ」
➡第7回 「受験勉強の意味を考えてみる①」
➡第8回 「受験勉強の意味を考えてみる②」
幼児・低学年コースの授業で使う教具。このコース出身の中学生の平均偏差値は66。センスをじっくり育てる。
※掲載されている情報は、2021年9月以前に取材した内容です。時間の経過により実際と異なる場合があります。
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