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【最新販促事情】石川から世界へ。輪島塗の可能性を切り拓く『田谷漆器店』のPR戦略とは?

2024年5月6日(月) | テーマ/ニュース

2024年4月9日、岸田文雄首相は米ワシントンのホワイトハウスを妻•裕子さんと訪れ、バイデン大統領に輪島塗のコーヒーカップとボールペンを贈った。大統領夫妻に贈られた輪島塗を手掛けたのは田谷漆器店。被災した職人たちが技術を注ぎ、完成させたものだ。このことは全国のニュースでも大きく取り上げられ、現在、田谷漆器店への注文は相次ぎ、2年待ちという状態となっている。

田谷漆器店に白羽の矢が立った背景は色々あろう。その一つに、令和6年能登半島地震の後、輪島塗の産業全体の復興を願い、いち早く立ち上がり、クラウドファンディングで支援を募ったことがある。震災から2週間を待たずに、レディフォーにてクラファンをスタートさせ65,425,000円を達成。間をおかずにキャンプファイヤーにて支援を募り16,359,500円を超過、さらには台湾のクラファンZECZECへと展開しこちらでも5千万円を超え、計1億3,000万円超もの支援を集めることに成功した。

被災者だから支援をしてもらえるわけではない。田谷漆器店・代表の田谷昂大さんが発信した、被災の現状と能登復興と輪島塗復興への決意が多くの人の心を動かしたのだ。田谷さんに成功への具体的なプロセスを振り返っていただき、クラファンに対する考えを伺った。

「震災によって輪島塗は産業が途絶えてしまう危機に直面しました。新しく建設していた輪島のギャラリーもあとはオープンを待つばかりという状態の中、焼失してしまったんです。正直、心はぽっきりと折れていました。ところが、職人たちは違ったんです。一日も早く仕事をしたい、復興したらあれもこれもしたい、というまっすぐな情熱に触れ、私がここで折れる訳にはいかないな。なりふり構わずできることをしようと」

何事も誰も動かない時から早く動くことが肝要だと、田谷さんは確信を持って話す。「早く動くことでよいモデルケースにも、反面教師にもなる。いずれにせよ早く動くことが復興に一番近いと思ってスタートさせました」。元々、さまざまなクラファンに挑戦していた田谷さん。実は20回以上の経験があり「成功もありますが、もちろん失敗もたくさんしましたよ」という。

競争が激化する中では、戦い方を見極めるのが重要だとも。もともと田谷漆器店は、戦略に応じて企業が細分化させており、これは田谷さんの考えをスムーズに実行・実現するために非常に重要なのだ。

一つは『株式会社The Three Arrows』。
・小売部門|一手間加えた伝統工芸品を提案
・海外市場|既存以外の顧客層や販路の開拓
・レンタル|工芸品のレンタルやシェアリングで新しい需要を創造
の3本の矢で展開。

もう一つは、輪島塗を実際に体験できるレストラン『クラフィート』。クラフトとアートを掛け合わせた造語で、輪島塗だけでなく石川県の伝統工芸品やアートの魅力を物販と食体験の提供を通じて実感してもらおうとする挑戦的な店舗だ。

そして、『田谷漆器店』。輪島塗を守り、繋げるという田谷さんの精神を伝える老舗となる。The Three Arrowsとクラフィートは挑戦型事業で、伝統工芸の新しいかたちを伝えている。クラファンに挑戦しているのもThe Three Arrows。田谷さんがブルーオーシャンと言った参加当初は伝統工芸を扱うプロジェクトがほとんどなく、存在自体が新しかった。それもあって成功したが、3年目は大きく売り上げを落としたのだという。

3年目の落ち込みを受けて、「先行販売=市場調査」と位置付けた。「ちょっと前ならいいものを作れば売れた。今は初期費用をかけないと難しい」と情勢を見る。クラファン市場として「海外は意外と“あるな”と思っています」と教えてくれた。

グローバルサウスと呼ばれる南半球の新興国・発展途上国は急激な経済成長が見込まれ、人口増が予測されている。クラファンは世界中の人々がアクセスでき、リーチしやすいため、プロジェクトを立ち上げれば国内外の壁を超えて、潜在的な支援者とつながることが可能だ。今後、インターネットの普及率も上昇する市場において、日本の伝統工芸品が興味を持って迎え入れられる可能性が高い。

結果としてクラファンは低コストのプロモーション・ツールと位置付けることはまだまだできる。

ちなみに、国内外への発信は自社ECサイトへの誘導や販売網の拡大にもつながるという。以前の実施したキャンプファイアーでは、キッチンツールという意欲的な商品で市場調査をして、そこでファンになった人たちが輪島塗を知り購入してくれたり、プロジェクトを見た小売店から声がかかったりというケースもあったそう。掲載記事はこちらから

今後の売り方のビジョンをお聞きすると、「輪島塗そのものはそんなに変わることはありません。既存の品物やイメージからチェンジが大きいとそれは伝統工芸品なのか?という声があがる。かと言って変化しないと市場に受け入れられないという現状があります。大きな変革はもたらさず、時代にどうマッチさせながら売るのかを考えた時に、商品は変えられないので、販売チャンネルを変えていくことは絶対課題だと思っています」

この言葉を裏付ける取り組みがシェアリングエコノミーやレンタル。従来の伝統工芸業界にはなかったアイデアだ。「シェアリングやレンタルが伸びることで輪島塗に興味を持ってもらえる。まずはハードルを下げるのが大事だと思っています」

かつては嫁入り道具に輪島塗一式を持たせる家も珍しくなかった。そのような家でも大切に保管はされているが使ってないものもがほとんどだろう。今、暮らしの中で輪島塗を使用している家庭はやはり少ないと言わざるを得ない。その現実と向き合い田谷さんはシェアリングやレンタルという市場開拓に乗り出した。「ブランドを下げるという声もありますがそうではない。使っていただいて良さをしっていただく。良いものに触れることで広がる世界をお伝えしたい」

震災により、輪島塗というワードは以前より飛び交っている。「イベントに呼んでいただくことも増えたんです。しっかりと対面でPRさせていただこうと思っています。新しいことにチャレンジしながら、基本に戻るのも大事だと感じています」

輪島塗の復興を誓い、次代へとつなぐための取り組みを行う。販売チャンネルやPR活動はインターネットプラットフォームを活用しながら世界を対象に発信する傍らで、一人ひとりに会って目を見て話しながら。最後に輪島塗を通して実現したいことをお聞きしたところ、「能登半島を国際的な観光都市にすること」との回答。

言うまでもなく高齢化、過疎化が進む能登は、今回の震災では道が寸断して能登に入れないという立地の特徴も露呈した。多くの問題を抱えてはいるが、美しい自然、食文化、伝統工芸、伝統芸能など独自性の高い資源が豊かにある。「産業を支える我々が垣根を超えて、足並みを揃え一枚岩になって震災を乗り越えていきたい。無理に背伸びをして作られた観光都市になるのではなく、気負わない満足度の高い場所になるように、輪島塗業界の復興をそのきっかけにしたい」と話す。クラファンもさまざまな事業も、輪島塗の、能登の明るい燈となることを決意して進むその姿に、人は希望を見るのかもしれない。

田谷漆器店・代表田谷さんの成功を支えるポイント
◉時流を見ながら、まずやってみる。失敗してもやる
◉国内クラファンを先行販売=市場調査と位置付け商品開発に繋げた
◉クラファンを低コストのプロモーション・ツールと位置付けた
◉輪島塗を販売チャンネルを変えながら提案した
◉挑戦事業は別事業化し、身動きの取りやすい仕組み・体制に
◉能登や輪島塗の将来ビジョンを見据えた中での取り組み

■株式会社 田谷漆器店(たやしっきてん)
石川県輪島市杉平町蝦夷穴55
TEL/080-2376-5822
営/8:30〜17:30

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