[第1回]
北陸の旬を堪能する日本料理7選
山海の幸に恵まれた金沢には、個性豊かな飲食店がたくさんあります。第1回目となる今回は、その中から、風味豊かな料理はもちろん、器や空間、ロケーションなども魅力的な和食店7軒をご紹介します。
御料理貴船[金沢市彦三]
日本料理ならではの贅が表れた献立に、心浮き立つ。
煮炊きする、ふくよかな香りが漂う店内。誠実な仕事が窺え、自ずと期待は高まる。運ばれて来る一品一品には、素材に器使いにと、季節が細やかに映し出されており、何とも優雅で心豊かな気分だ。
「日本ならではの良さを感じてもらえたら。たとえば節句も奥が深く、改めて調べると知らなかったことが山ほどある。そして日本っていい国だな、日本人で良かったなとつくづく思う。料理だけでなく、和の文化をもっと勉強し、心も満たされるようなひとときを提供したい」と店主の中川清一さん。
情熱と向上心、気配りに満ちたもてなしに魅せられ、『貴船』での食事を、月に1度の楽しみとして訪れる常連も少なくないため、早めの予約が望ましい。
石川県金沢市彦三1-9-69
TEL 076-220-6131
営/11:30~13:30(L.O.)、17:00~20:30(L.O.)
※日曜のみ7:00~9:00[要予約、昼・夜各4組限定]
休/水曜
席数/テーブル8席、座敷2室 ※完全個室
カード/可
P/要問い合せ
●1人あたりの予算
昼3,000円~(税別)、夜6,000円~(税・サ別)、朝1,500円(税別)
●アクセス/ひがし茶屋街から徒歩6分
町家懐石六花(ろっか)[金沢市六枚町]
持ち味を素直に活かし、素材の記憶が残る品々を。
見た目の美しさもさることながら、一つひとつの素材の、雑味のない力強い風味が印象的な宮田和則さんの料理。たとえば、すり流し。葉や皮まで余すところなく巧みに活かした、同店の魅力を象徴する定番だ。よく食べ慣れた野菜にさえも初めて感じる旨みがあり、思わず頬が緩む。
信条は「食材ありき」。足すも引くも、すべての仕事は素材本来のおいしさを引き出すため。一品に用いる食材の数も抑え、個々の味わいを実感できる料理を供する。
新たな季節を迎えるたびに、宮田さんの料理は磨きがかかる。京都で研鑽した氏が未知の町、金沢で店を構えて5年。当地の食材をより深く知る程に、同じ料理も進化を遂げる。弛まぬ探究心に、何度でも足を運びたくなるのだ。
石川県金沢市六枚町2-7
TEL/076-221-6166
営/11:30~15:00、17:30~22:00
※昼営業は月・火・金・土・日曜のみ
休/水曜、月1回火曜(不定)
席数/20席
カード/可
P/5台
●1人あたりの予算
昼4,000円~(税別)、夜8,500円~(税別) ※料理は全てコースで提供
●アクセス/JR金沢駅から徒歩8分
旬肴 旬菜 宵酒八十八(はとは)[金沢市木倉町]
持ち前のセンスと遊び心が紡ぐ、人気の絶えない実力店。
賑やかな木倉町通りにあって、町家造りの落ち着いた佇まい。やや奥まってかかる暖簾も奥ゆかしい。
趣ある自筆の品書きにはオーソドックスな和食もあれば、ちょっとした意外性が楽しい一品、洋の要素を取り入れたワインにも合う一皿もあり、目移りしてしまう。基本は押さえつつ少し外したり、いい意味でこちらの想像を裏切ったり。その按配が絶妙で、器使いと共にワクワクさせてくれる。
「わが家に帰ったように寛げる温かい雰囲気にしたかった」という店内は、親しみやすさと程よい非日常感が共存。出過ぎず引き過ぎず、お仕着せでないスタッフの対応も手伝って、居心地がよい。「周りの方々のおかげで今がある。感謝するばかりです」。店主・米澤さんの誠実な姿勢もまた人々を惹きつける。
型におさまらないセンスに、気持ちよく酔えるのだ。
石川県金沢市木倉町6-6
TEL/076-260-8166
営/18:00~24:00(L.O.23:00) ※予約が望ましい
休/日曜(祝日の場合は営業)
席数/カウンター8席、個室1室(5名まで)
カード/可
P/なし
●1人あたりの予算
夜5,000円~(税込)
※単品600円~(税込)、コース8,000円~(税込)
●アクセス/長町武家屋敷跡から徒歩5分
御料理五十嵐[金沢市香林坊]
逸らず、流されず。〈純粋な和食〉を貫く気鋭店。
せせらぎ通り沿いで若者から年配者まで幅広く支持される和食店。
店主の五十嵐さんは、高校時代から板前に憧れ、和食一筋。「食材そのものを活かす繊細さが格好よく感じました。この道に進んでからも、その素晴らしさに惹かれるばかりです」と言い、和食本来の仕事を疎かにしない。昆布と鰹でしっかり出汁をとる、魚に塩をあてる、干して旨みを凝縮させる――。技巧に走らず、素材の持ち味を引き出すための仕事に徹し、手間暇を惜しまない。リーズナブルな価格と充実した日本酒の品揃えも魅力。旬の素材が少しずつ多彩に盛り込まれ、器遣いも行き届き、満足度が高い。「新しい何かをというより、初心を忘れず精一杯の気持ちを込め、妥協なくやっていきたい。手を抜くのも楽をするのも簡単」と気骨のある思いを持つ店主。さらなる熟成が楽しみである。
石川県金沢市香林坊2-11-17
TEL/076-213-5251
営/18:00~21:00(L.O.)
休/日曜、祝日
席数/カウンター6席、テーブル8席
カード/可
P/なし
●1人あたりの予算
夜5,400円~(税込)
●アクセス/尾山神社から徒歩7分
いけ森[金沢市芳斉]
「地物のおいしさ」を追求し続けて邁進する割烹。
8年間過ごした片町から、2016年10月、『玉川図書館』近くの芳斉に一軒家を構えて移転。新調した黄色の暖簾が目印だ。店内は畳敷きで、凛とした中にも和やかさが共存した気持ちのいい空間。ゆったりと席を配したカウンター席のほか、個室も3部屋設けられ、プライバシーに配慮した造りとなっている。
「以前と変わらない」というものの、近江町市場に近くなった地の利も得て、店主・池森さんはいっそう料理人としての道を究め、実直な姿勢と繊細な仕事で料理に瑞々しい息吹を与えている。
「今日の食材と、今日のお客様。毎日が真剣勝負と思って臨んでいます」。こうした日々の積み重ねが糧となり、次なる未来を形作っていくのだろう。
石川県金沢市芳斉1-6-11-6
TEL/076-231-0498
営/18:00~21:00(L.I.)
休/日曜、祝日
席数/カウンター5席、個室3室
カード/可
P/なし
●1人あたりの予算
10,000円~
●アクセス/武蔵ヶ辻バス停から徒歩5分
はな乃[金沢市武蔵町]
旬の香りと滋味を活かした衒いのない料理が魅力。
近江町市場近く。『めいてつ・エムザ』裏の和食店。「なるべく無駄なことをせず、シンプルにしたいと常々考えています」と話す店主・小山和之助さん。京都や金沢の割烹、東京の料亭にて修業を積み、独立した料理人である。福井産の削り節を使用して料理によって2種類を使い分けるなど、日本料理の基本である出汁にこだわり、素材本来の旨みを逃がさないよう細やかに神経を行き届かせる。
「茹でずに蒸したり、焼いたり…、素材を活かすための工夫は惜しみません」。そうして作り上げる繊細な一品をリーズナブルに提供する。小山さんの快活な人柄も魅力。テーブル席や座敷も用意されているが、臨場感のあるカウンターで一品一品堪能するのも一興だ。
石川県金沢市武蔵町13-27
TEL/076-255-0787
営/11:30~14:00、17:30~22:30(L.O.)
休/月曜
席数/カウンター8席、テーブル8席、座敷10席
カード/可
P/なし
●1人あたりの予算
昼900円~、夜5,000円~
●アクセス/近江町市場から徒歩3分
仁志川[金沢市寺町]
重森三玲による庭園美と多彩な料理でおもてなし。
桜橋に近い高台に位置する割烹料亭『仁志川』。500坪もの敷地面積に立つ旧邸宅は、粋を尽くした贅沢な空間で、すべての席から美しい町並みと庭園を望むことのできる最高のロケーションとなっている。特に庭園や玄関周りのアプローチは日本を代表する作庭家の重森三玲が手がけたもので、モダン感覚に優れた氏の作品を眺めながらのひとときは格別だ。
昼席では、懐石料理をはじめ、手頃な価格で楽しめる弁当などが用意されており、夜はコースのみならず、一品料理で一献傾けるといった使い方も可能。季節によって、フグやカニのコースなども登場し、宴席にも重宝する。あらゆるシチュエーションに応えてくれる、今の時代に呼応したもてなしの場だ。
石川県金沢市寺町3-5-18
TEL/076-241-0111
営/11:30~14:00、17:00~22:00(L.O.21:30)
休/水曜(祝日の場合は営業、翌日休)
席数/テーブル40席、2階座敷18名まで ※全席禁煙
カード/可
P/14台
http://nishikawa-knz.com/
●1人あたりの予算
昼2,000円~、夜8,000円~
※料理は予算に応じて対応可
●アクセス/兼六園より徒歩15分