第4回
平安時代、お公家さんの妻や娘、またその御付きの女官たちは雨の日が続くと外出ができず(雨具というものがまだなかった)、そんなとき、暇に任せてやることといえば、ただぼんやりと窓から外を見ることくらいだったという。そこで生まれた言葉が「眺め」。「長雨→ながあめ→ながめ→眺め」というわけで、小野小町の有名な一首は、この「長雨」と「眺め」を巧みにかけたものだ。
花の色は 移りにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
「長雨が降っている間に美しい花は色褪せた。私の若さも同様、世間を眺めて物思いに耽っている間に衰えた」と、少々自虐的に詠んでみたところに小町の遊び心が感じられる。
いまではまったく聞かないが、かつて降り続く日数によって雨の呼び名は異なっていた。1、2日ならそのまま「雨」で、これが3日以上になると「霖」、10日を過ぎれば「霪」となる。雨冠に「淫」と書いたからといって「外出ができず、淫らな行為に勤しんだから」と想像を膨らませるのは間違い(たぶん)で、「淫」の字には本来「度が過ぎて弊害が起こる」という意味がある。
さて、金沢は「弁当忘れても傘忘れるな」と言われるくらい、天候の変化が激しい。しかし、最近は家を出るときに降ってでもいない限り、特に若い人に顕著だが、傘をあまり持ち歩かないようになった。では雨にどう対処するかというと、コンビニでビニール傘を買うのである。
コンビニの店長は天気予報の確認を欠かさないという。そして、ひとたび雨を感知すれば、倉庫からビニール傘を出して入口付近に大量に並べる。オフィス街の店舗などでは、こうした地道な努力が大きな売上に繋がることも再々なのだそうだ。