第2回
撮影:苗加和毅彦(1998年撮影)
金沢は、坂と小路のまちでもある。
とりわけ旧市街地は、ほそ路地が回廊のようにくねくねとまちをうがち、
はじめての旅人はひとたび分け入るともうそこが何処であるのやら、はたと途方に暮れてしまうことになる。
大きな厄災に遭っていないことが幸いしたのか災いしたのか、ともかく金沢のほそ路地には謎が多く、
気のちがった男と女が汗ばむほどにそれぞれの手をまさぐりあい、
もつれあいながら寒々と道行くにふさわしい。
とくに旧早道町あたりは、まっすぐに伸びた道がひとつとてなく、
家並みの低さもあいまって昼日中もなにやらうす暗い印象があり、
夕刻、想いの底を探りながら歩くのによい。
桜坂
※掲載されている情報は、時間の経過により実際と異なる場合があります。(更新日:2017年3月28日)