インタビュー【志賀の郷リゾートの皆さん】
滞在拠点として、復興に貢献したい|『ハートランドヒルズ』中川さん
震災時、「ハートランドヒルズ」代表の中川さんは、別荘がどうなっているか想像して絶望したと言います。贅沢な非日常体験を提供するこのリゾートには15棟の別荘があり、1棟が全壊しました。「当日は全棟にお客様が宿泊していました。皆さん、各自で水や食料を持参していたのは幸いでした。すぐに安否確認ができ、全員の無事を知り、安心しましたが、相次ぐキャンセルで従業員や家族の生活をどう維持すればいいのかと暗い気持ちになりました」と中川さん。
しかし、1月2日にメディア関係者の宿泊依頼が増えたことで、震災取材の拠点として利用される状況に。「単純に、宿泊していただけるだけで嬉しかったですし、お役に立てることがあるなら喜んで協力したいと思いました」と中川さんは話します。また、被災者でもあるスタッフが「掃除にいきます」と駆けつけてくれたことに感謝し、人の温かさに支えられていることを実感したそう。震災を経て、中川さんは人との縁や、当たり前の日常の大切さに気づいたと言います。「未だ復興が遅々として進まない奥能登を心配していますが、能登は一つという思いを持っています。ここで、奥能登の復興を力強く推進できる拠点となりたいです。これからも、美しい自然と温かい人情を通じて、忘れられない思い出と豊かな時間を提供し続けたいと思っています」
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おいしいカレーで笑顔をつなぐ。|『カフェ マカン』岩上さん
2023年3月念願のお店をオープン。ネパールのカレー定食「ダルバート」が評判となり順調な日々を過ごしていた矢先、震災を経験した岩上さん。「経験したことのない揺れで、オーブンやかき氷機が飛ぶのを呆然と見ていました」と当時を振り返ります。特に印象的だったのは、遠心力で粉々になった吊り戸棚の中の皿と、豆の粉が入った袋に刺さった包丁。「地震の脅威を改めて思い知りました」。それでも、「応援に来たよ、美味しかったよ」というお客さんの声が心の支えに。震災を通じて常連客との距離が縮まり、差し入れや野菜を持ってきてくれる優しさに触れることができたといいます。応援を受けて、「自分も何かできることをしたい」との思いから炊き出しやカレーイベントにも参加し、「人と接することで力をもらいました」と明るく笑います。
携帯のアラーム音には今でも体が反応してしまうそう。潜在的な恐怖は拭えませんが、それでも「人生何が起こるかわからないけれど、なんとかなる」と笑います。「実は、震災で予定していたシンガポール旅行がキャンセルになったんです。でもシンガポールからキャンセル料を免除の連絡が入りました。それで、世界的なニュースだったんだと感じました」と彼女は言います。一年経って「改めて旅行を計画中です」とにっこり。未来への希望を胸に、力強く前を向く岩上さん。その笑顔に会いたくて今日も多くのお客が訪れます。
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志賀町や石川県の食材を心に残る一品に|『イグレック』奥野さん
「能登の食材を活かした、イタリアンとフレンチのエッセンスを加えた料理を楽しんでほしい」と語るのは、「イグレック」のシェフ奥野さん。地元の魚介、野菜、肉に対する敬意は、食材そのものの魅力を生かした料理に現れます。「お客様に『おいしい時間』を提供することが、最大の喜びです」と奥野さんは言います。
震災当日、実家への帰途に準備をしていた奥野さん家族は、経験したことのない大きな揺れに見舞われました。余談を許さない余震に震えながら、津波の心配から逃れるため、家族とともに一晩を山で過ごしたと振り返ります。「余震が続いて身動きが取れず、断水で店を開けることもできませんでした」。元々5日までは休みの予定。「料理人として、自分にできることを」と考え、シェフは炊き出しに参加しました。富来、珠洲、輪島での活動を通じ、「人の温かさに触れて、自分も人を思いやれる人でありたいと感じました」と語ります。震災後、常連客や懐かしい顔が訪れ、新しい客も増えたことに感謝しているそう。「写真は記憶を薄れさせるように感じます」と話し、記録ではなく、五感に訴えかけるような記憶に残る時間を提供したいと奥野さん。「『ありがとう』という言葉の重みを改めて感じ、日々の一瞬一瞬を大切に、お客様と共有したい。その重なりが明るい未来でありたいですね」と奥野さんは静かに微笑みました。
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※掲載されている情報は、2024年10月以前に取材した内容です。時間の経過により実際と異なる場合があります。