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【農援ラボ|北次農場】アクアポートのある現場から① 省力化の先にある地域の耕作放棄地への取り組み

2024年8月9日(金) | テーマ/エトセトラ

農援ラボ
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稲作の重要な工程であるとともに手間のかかりどころでもある水管理。その省力化に貢献するのが北菱電興の水田用自動給水機「アクアポート」だ。上限/下限用のふたつのセンサーで水位を感知し、自動での給止水を実現。電池で駆動し、設置も簡単。あえて機能をシンプルにすることで実用性と低価格を両立させている。
では現場での実感はどのようなものなのか。実際にアクアポートを導入した稲作農家を訪ね、これまで抱えていた課題と導入のきっかけ、導入前後の農作業の変化や今後の展望などを伺った。

 

石川県を代表する河川・手取川。白山を源流とするその流れは肥沃な土を下流域へ運び、県下最大の穀倉地帯である加賀平野を形成している。北次農場のある川北町は、手取川の右岸(北側)に位置する町。幹線道路を走ると車窓の先に青々とした水田風景が広がっていた。

「この施設には稲刈り後の工程に必要な設備が入っています。手前にあるのが乾燥機と、籾摺りや選別をする機械。奥には僕が継いでから新たに導入した大型の火力乾燥機もあるんです」

案内するのは、北次農場の代表を務める北次聖(きたじ さとし)さん。水稲のほか大麦や大豆、そして地域の特産品であるイチジクを生産し、北次さんが就農してからは年を追うごとに農地を拡大。現在では町内のみならず隣接する能美市や白山市にまで広がり、延べ160haを超える大規模な農業経営を行っている。

北次さんが父親から経営を引き継いだのは2018年。農家の長男として生まれ、家業の道を選び15年が経った頃だった。その歩みからは“孝行息子”のように映るが、「いや、仕方なくといった感じですよ。今だって休みがもっとほしいと思いますし」と、今どきらしい答えが返ってきた。

もっとも北次さんの言葉は、実作業者としての偽らざる思いに違いない。例えば田植えひとつとっても、広範な圃場が相手となれば段取りが何より重要になる。さらに大麦の収穫や大豆の種まきも同時期に集中するため、繁忙期には日毎のスケジュールが細かく設定され、自身の休暇はどうしても二の次になってしまうからだ。

大規模農場による大量生産に特化した北次農場にとって、農作業の効率化は経営の生命線だ。北次さんはドローンを活用した追肥や防除、トラクターに自動操舵システムを搭載するなど、スマート農業を積極的に導入。その取り組みが評価され、昨年には農林水産省主催の「令和5年度 全国優良経営体表彰」の経営改善部門で農林水産省経営局長賞を受賞するに至っている。

「投資できるものはして、空いた体と時間をほかに有効活用すればいい」と北次さん。北菱電興の水田用自動給水機「アクアポート」の導入もまた、そうした経営の合理化を図る一連の取り組みのひとつといえるだろう。

「水田の水管理は昔ながらのやり方、つまり手作業で父親がやっていたんです。本来は夜間に給水したいんやけど、管理する圃場が多くて実際には昼から給水を開始している状況でした」

毎日のように給止水が必要となる水管理は、稲作の重要な作業であるとともに大きな負担でもある。かねて自動給水機の存在を知っていた北次さんだったが、スマートフォンとの連携機能があるような高機能な製品はかなり高価で導入に二の足を踏んでいたという。

そんな北次さんが心変わりしたのは2021年のこと。アクアポートのデモ機を試用する機会があり、思いのほか好感触を得たのだ。

「スマート農業のエントリー機」とメーカーが位置づけている通り、アクアポートは機能をシンプルにすることでリーズナブルな価格を実現していることが特徴だ。電源を入れ、管理者が上・下限の水位センサーを任意の高さに設定するだけと、操作もいたって簡単。電源ランプの点滅の間隔で正常動作しているか確認できるので、夜間の見回りも容易だ。

北次農場では現在、80台を超えるアクアポートを所有。用水の形状など、より効果が見込める箇所から順次設置を進め、水田全体の約1/4の水管理をまかなっているという。「それだけ父親の負担が軽減されたということやんね」と、北次さんは改めてその効果を振り返った。

「米づくりに専念するためにも、機械で省力化できる部分は積極的に活用した方がいいと僕は思っとるんです」。北次さんのその言葉の背景には、新規就農を阻むキツいイメージ、あるいは高齢化や体力的な問題による離農といった課題への危機感があるという。北次農場が農地を拡大しているのも、離農を選択した地域の農家が代々守ってきた農地を借り受けることで、農業の灯を絶やさぬようにしたいという思いがあるからだ。

「一度耕作放棄地になってしまうと、また作物を育てるのって難しいんです。アクアポートは設置や操作が簡単な分、高齢の米農家さんも導入しやすい。みなが省力化できれば、もしある農家さんが辞めるとなったとしても、自分たちだけじゃなく周りの農家さんがその農地を背負えるようになるかもしらんよね」

実際に近隣農家の関心も高く、設置しているアクアポートを見ながらあれこれと使い勝手を聞いてくるのだそう。スマート農業という概念を意識することすらなく省力化を実現するアクアポート。必要とする農家はきっと多いはずだ。

■今回の農家さんが導入したモデルは……

【製品名】アクアポート(AP-001)
製品詳細はこちら
https://www.hokuryodenko.co.jp/aquaport/

【取材協力】
北次農場
住所/石川県能美郡川北町朝日イ24
電話番号/076-278-2743
公式SNS  https://www.instagram.com/kitajinojo.kawakita/

※掲載されている情報は、2024年8月22日以前に取材した内容です。時間の経過により実際と異なる場合があります。

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