全国巡回中。ヨシタケシンスケ初の大規模展覧会開催!
【金沢イベント】「ヨシタケシンスケ展かもしれない」でご本人に質問! 体験レポ後編。
大人も子どもも楽しめる展覧会の工夫とは。ヨシタケシンスケさんご本人にインタビューしてきました。
2022年春にスタートした、ヨシタケシンスケさん初の大規模展覧会「ヨシタケシンスケ展かもしれない」 が、全国を巡回中です。東京を皮切りに10都市を巡り、金沢は11都市目。6月15日(土)〜7月14日(日)まで金沢21世紀美術館で開催されます。デビュー作『りんごかもしれない』(2013年)以降、子どもから大人まで大ブームを起こしている大人気絵本作家の初の展覧会とあって、首を長くして待っていたファンも多いのではないでしょうか。今回の後編の記事では、前編では紹介しきれなかった展覧会の見どころや、ヨシタケさんへインタビューした内容を中心にお届けします。
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既に多くの人が訪れている「ヨシタケシンスケ展かもしれない」は、お子さま連れも多い様子。その感想の多くは「楽しかったー! 」なのだそう。美術館での展覧会と聞くと「敷居が高い」「子どもが退屈しそうで行けない」と思うかもしれません。しかしヨシタケさんの展覧会は、子どもも大人も同じ空間を楽しんでいます。その理由はヨシタケさんの原画の小ささにありました。
通常絵本を作る際は、原画を大きく描いて縮小してから絵本にするのだそうです。ヨシタケさんの場合は、原画が小さいので、逆に拡大してから絵本にしているのだとか。
しかし、ここで問題が。原画だけを並べると場所が埋まらない…! というわけで、さまざまな世代の人が楽しめるような空間を作ろうと構想を練ったのだそうです。じっくり見たい人はじっくり見てもらえるように、体を使って感じたい人は体験コーナーで楽しめるように。
ここで、会場を一緒に見ていた編集者kumaさんが一言。「なんでジップロックなんでしょう? 」
確かに。ヨシタケワールドに入り込んでしまい、目の前の作品の面白さに夢中になっていましたが、冷静に考えてみると、なぜジップロックに入れて展示しているのでしょう。さらに会場を見渡すと、壁はベニヤ板。そこかしこに黄色い付箋にヨシタケさんのメモが貼り付けてあります。
今回の展覧会のテーマは「ヨシタケさんの頭のなかをのぞくこと」。頭のなかで自分が何を考えているのかを表現するため、ヨシタケさんが意識したのは「未完成」であることでした。
ジップロックやベニヤ板、付箋といったホームセンターで購入できる日用品たちは、素材でしかありません。ヨシタケさんの頭のなかも、素材や材料の状態で好きなものや興味のあるものが、散らばっています。一見バラバラに見える材料が重なり合い、組み合わせられ、一冊の本になる。そんな過程を表現するため、このような展覧会の形になったのだそうです。
「キレイな空間というよりは、雑然とした、混沌とした頭の中を表現している」とヨシタケさんは言います。ヨシタケさんの思考や興味の一端が感じられる手作り感満載の会場は、「え、こんなところにも?! 」というような場所に展示や書き込みがしてあって、まるで宝探しのような気持ちで楽しむことができますよ。
金沢展のテーマカラーは、紫。九谷五彩をイメージしているのだそうです。以前から金沢21世紀美術館に来たかったというヨシタケさんは、「思っていた以上にアットホームで、僕好みの作品がたくさん。今度はゆっくり家族と来たい」とおっしゃっていました。
40歳で絵本作家としてデビューし、多くの人から愛される作品をたくさん生み出していますが、絵本作家になれるとは思っていなかったと言います。
ヨシタケさんは子供の頃、夢がなく、将来なりたいものがなかったそうです。でも今の自分のように「その場その場でいろんなことをやってみて、楽しく生きていたら思いがけないことも起きるんだよ。そういう珍しいおじさんもいるんだよって、自分が子どものときに教えてほしかったことだから、そういうことも伝えていきたいと思います」とおっしゃっていました。
(実はヨシタケさんは、色付けが苦手なので、別の方に頼んでいるそうです。雑誌の特集記事で拝見しました)。
展覧会の終盤、公式グッズの会場に入る前の「おわりに」の言葉は、未来を生きる子どもたちへのやさしいメッセージになっています。ぜひ、会場で直接ご覧くださいね。
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※掲載されている情報は、2024年6月以前に取材した内容です。時間の経過により実際と異なる場合があります。