【イシカワズカン】能登の湧水で引き出す味 |生そば槐(えんじゅ)(七尾市能登島向田町)
2024年2月1日(木) | テーマ/エトセトラ
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石川県の中程に位置する七尾湾に浮かぶ能登島。海に囲まれた自然が広がるのどかなその場所で、手打ちの生そばにこだわる『生そば槐(きそばえんじゅ)』がある。この店を切り盛りする七尾市出身の田中哲也さん(52)と真里子さん(48)夫妻になぜ、この地でそば屋をはじめたのか、その経緯や思いを伺った。
「そばが好きでよく食べ歩いていたんです。それもあって静岡で勤めていた会社を脱サラして蕎麦打ちを始めました」と哲也さんはオープン当時を振り返る。蕎麦を学ぶなら本場で、と、長野県の上田市にある店で約3年修行し蕎麦打ちの技術を学んだ。地元に戻ってからは加賀屋での調理の仕事を経験。その後、2013年5月に『生そば槐(きそばえんじゅ)』を開店。当初は岐阜県高山市の町並みが気に入り同所に出店することも検討したが、やはり「地元がやりやすいだろう」と七尾で場所探しをはじめた。能登島にある大正時代の古民家をたまたま見つけ購入。リフォームした店内は天井を外し、大きな梁を見せる。田植えに使用していた「ころがし」を照明に再利用する。店名は子供が生まれた時に記念樹として魔除けの意味もある槐の木が由来。蕎麦屋はよく木の名前をつけるとのこともあって名付けた。
店のそばは手打ちで、つなぎを使わない十割蕎麦だ。蕎麦粉本来の味を引き出すために石臼で製粉し、隣町中能登町の「十却坊の霊水」を使用。そばの原料は北海道のものと、以前は能登で採れる在来種の「丹生(にふ)蕎麦」を使用していたこともあったが今は福井から取り寄せている。
店のおすすめメニューは様々な種類の盛り蕎麦を味わえる「三色盛り」だ。「更科」は、蕎麦の芯のみを使用しており、真っ白な色とキレの良い食感が特長で、上品さを感じさせる。他にも、蕎麦の実の殻を取り除き、実を石臼で挽いた「挽きぐるみ」や殻がついたまま石臼で挽いた「田舎」は粗びきすることで蕎麦本来の芳醇な風味と独特の食感を楽しめ、食べ比べながら味わえる。
「十割の蕎麦粉だけでつなぐときには特に水が重要。仕上がりが変わるんです」と真里子さん。いくつか地元の水を試した中でも中能登町の湧き水が合っていたそう。
他にも旬の素材を蕎麦に混ぜ込んだ季節の蕎麦四季折々に楽しめる。春は桜やよもぎ、夏は梅やミョウガ、秋は能登野菜の中島菜、冬は柚子や生姜など、地元で採れた素材を混ぜ込んでおり、こちらもぜひ味わいたい一品だ。また、食後に出される蕎麦湯もやさしくまろやかな味わいで美味しい。
「蕎麦が食べたくなったときに思い出していただける店でありたいですね。不便な場所にありますが、食べに行くのが楽しみと思ってもらえるようなお店にしたい」と話してくれた。
『生そば槐』はJR七尾線・のと鉄道和倉温泉駅から車で20分ほど。テーブル席の他にも座敷も広く、1人はもちろん家族でもゆったりとくつろぐことができる。能登島の観光の際にはぜひ立ち寄ってみてはいかがだろうか。混み合うこともあるため予約していくのがおすすめだ。