【あんがとう農園】西洋野菜を栽培し、世界中からシェフが視察に来る農園の経営成功の秘訣
2023年12月7日(木) | テーマ/エトセトラ
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能登半島の中能登町に、食用花(エディブルフラワー)やハーブ、特定の野菜を若い時期に収穫するマイクロリーフなどを自然栽培し、世界中からシェフが訪れる農園がある。それが『あんがとう農園』だ。ここには、なぜ世界中からシェフが訪れるのだろうか。代表の明星孝昭さんに話を伺った。
「自分にしか作れない野菜を作りたいんです。その結果、みんなが喜んでくれて売れると嬉しいですね。これからの時代、みんながやらないことをやらないと」と明星さん。能登では当たり前のように自宅の庭や畑で野菜を育てている農家がいるが、周囲に西洋野菜や食用花を育てている人は居なかった。そこで、需要のある西洋野菜を中心に育てることで販路もイタリアンやフレンチのレストランに絞り、「売れる農業」の第一歩を踏み出すことを決めたのだという。
今では150箇所ほどの飲食店と取引があるが、意外なことに営業は行っていない。「口コミで広がっていって、実際に農園に来た人に見ていただく。そうすることで、新鮮な状態の野菜を試食してもらいながら、使い方などもしっかり説明できる」のだそう。明星さんはこれを「提案型農業」と呼ぶ。
そうした中で、シェフから「こんな料理を作りたいから、合う野菜がないか」と要望が出てきた。「作ったことがない野菜も、とりあえず育ててみることが大切」とすぐに試すスピードの早さと品質こそが『あんがとう農園』の強みだ。これまでにつくった野菜は実に600種を超える。
農園にはコスモスやマリーゴールドといった馴染みのあるものから、アマランサスやカラミンサネペタなど初めて耳にするようなものまで、路地やハウスなど至る所に広がっていた。この規模で西洋野菜をつくっている農家は国内でもあまりいないそう。
「シェフが来ると目を輝かせてすごく楽しそうにしています」
説明を受けながら、食用花の試食をすると優しい花の香り、シャキシャキとした食感の後に、口の中に甘みや苦味などが広がった。最近は飲み物やケーキなどに飾られている食用花を目にすることは多くなったが、実際の家庭でも少し料理に加えるだけで食卓が華やぎ、楽しいものになるのだろうと感じた。
料理に彩りを加えたり、味にアクセントを加えたりするだけでなく、西洋野菜にはまだまだ可能性がある。その1つが「メディカルハーブ」だそう。日本の薬草のように、ハーブにも薬としての効能がある。例えば、頭痛や風邪の初期症状に効果があるとされるローズマリーや「長寿のハーブ」と呼ばれる抗菌・抗ウィルス作用を持つセージなど、食や料理から医療の可能性も探っていきたいと明星さんは言う。