金沢聖霊修道院聖堂
2015年4月30日(木) | テーマ/金沢の雑学

人気の観光地、長町武家屋敷跡の近くに『金沢聖霊総合病院』という病院があります。大正元年、カトリック宣教師ヨゼフ・ライネルス師によって開設。当時の地方の医療事情の乏しさを見た師が、東奔西走、献身的な努力によってその礎を築いた歴史ある医療施設です。その敷地内に佇んでいるのが『金沢聖霊修道院聖堂』。その簡素な美しさに魅せられ、ずっと足を運びたいと思っていたのですが、ようやく今回、シスターに案内していただきながら、いろいろお話を伺うことができました。
完成したのは昭和6年。チロル風の鐘楼をはじめ、聖堂内の円柱、アーケードアーチなど、ロマネスク様式を見事に再現した設計は、大正末期から昭和初期にかけて、多くのカトリックの教会堂建築を手がけたスイス人建築家マックス・ヒンデルによるもの。祭壇の神、イエス、聖霊の壁画に描かれている通り、三位一体に捧げられた聖堂内には、ステンドグラスを用いたバラ窓から光が差し込み、なんとも清らかな空間が広がっています。
そして、もう一つ、いわゆる「金沢らしさ」をたたえているのが特徴で、柱には黒漆塗り、アーチには群青と金といった金沢の伝統的な色彩を採用。金箔工芸もいたるところに用いられており、正面中央に祀られている十字架は、地元で獅子頭を彫っていた古瀬信一さんの作品(昭和14年)の作品だそう。さらに、右半分が畳敷きになっているのも(元々はすべて畳敷きだったとか)、当時の面影を色濃く残しています。
設計したのはスイス人ですが、施行したのは名古屋から来た岩松伊勢松さんという棟梁で、氏のご子息によれば、他に金沢の5人の大工さんと一緒に作り上げたと伝えられているそうです。
素晴らしいのは、この聖堂が、祈りの家、そして、み教えを聴く場、すなわち「信仰の場」として、現在も変わらず、金沢の人たちに愛され、大切にされているということ。毎日6時、12時、18時と、シスターの方々によってアンジェラスの鐘が鳴らされ、祈りの時が告げられると、祈りを捧げるために人々が集まってきますし、私が足を運んだ際も、病院に入院中の患者さんが手を合わせ、お祈りされていました。
この聖堂は、金沢市の指定文化財でもあり、一般公開されています(行事の際は見学できませんが)。暮らしの中にあるほんとうの美しさを体感されたい方はぜひ訪れてみてください。ただし、あくまでも「信仰の場」であることをお忘れなく。シスターは「神様は誰ものものでもありませんから」とおっしゃっていましたが、厳かな気持ちを忘れずに、お願いします。
金沢聖霊修道院聖堂 金沢市長町1-5-30
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