坂網鴨
2015年1月8日(木) | テーマ/金沢の雑学

今冬は、食トレンド「ジビエ元年」と言われ、クマ肉、イノシシ肉、シカ肉、鴨肉を使った料理に注目が集まっていますね。
石川県の南に位置する加賀市は、加賀藩の支藩で石高10万石の大聖寺藩があった城下町。
その海側にある「片野」には鴨池があり、約300年前の江戸時代から伝わると言われる鴨猟が伝承されています。
長さ3.5m、重さ約800gのY字形の網を投げ上げ、片野鴨池周辺の丘陵地を低く飛び越える鴨を獲る、その名も「坂網猟」です。坂網猟が行われるのは夕方。鴨が餌を求めて鴨池を飛び立ち丘陵地を越えるワンチャンスを狙います。
坂網鴨は主に穀類を食す天然鴨であるため、肉と脂のバランスが良く、野生特有の豊かな旨味があります。そして、夕食前の鴨は内臓が空っぽなため、 捕獲数日後でも臭みのない味わいを楽しめます。さらに、銃での捕獲とは違い網猟なので、肉を痛めたり出血によって肉の味を損なう心配がないのです。
坂網猟ができるのは毎年11月中旬~翌年2月中旬ごろまでの約3カ月間だけなので、「坂網鴨」を味わえるのは2月末頃まで。しかも、「坂網鴨」を提供できるお店は加賀市でも限られた飲食店だけです。
加賀市大聖寺にある『ばん亭』さんはその一つ。
炭火焼、治部煮、鍋といった様々な調理法で坂網鴨を堪能することができます。
写真の「坂網鴨尽くしコース」は一人前8,640円。
今、ジビエに注目が集まっている理由として、昔の人が「薬」としたように低脂肪・高タンパクな滋味深い食材であること、低脂肪でヘルシーなことに目が行きがちですが、一方で、近年野生の動物が民家の近くに頻繁に出没し農家が被害にあったり人が襲われたりしている問題も忘れていけません。
自然との共存が見直される現代に、藩政期から田んぼ農家、坂網猟師と鴨とが築き上げてきた共存関係を守り受け継いでいる「坂網猟」を広く知っていただければと思います。
ばん亭
石川県加賀市大聖寺東町4-11
0761-73-0141
休/水曜 席/120席 P/30台
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